
今回は全部歯がなくなってしまった時のインプラント治療についてお話させていただきます。
インプラント治療は人工歯根を顎の骨の中にうめて、それを支えにして食事を出来るようにする治療方法だということをこれまで解説させて頂きました。従って歯が全部なくなってしまっても、あるいは全部失いそうな患者さんでも治療を受けることができます。
それではいったい全部歯がなくなってしまった時には何本のインプラントが必要なのでしょうか? 普通親知らず(智歯)を除いて歯は上顎に14本、下顎に14本ですので、それと同じ本数が必要なのでしょうか? 答えはNoです。患者さんのお口の中、骨の状態にもよりますが、私はインプラント4本(あるいは6本)で全部の歯を支える治療方法を行っています。ずいぶん少ないとお思いの方もいらっしゃるでしょうが、一度インプラントが骨とくっつけば十分にかむ力をそれで支えることができるのです。(ただしコンピューター解析によるインプラントの最適な位置と方向、長さの検討が必要です。)本数が少ないことで患者さんに対する手術時の身体的な負担や経済的な負担を軽減することが出来るのです。
そしてなんといっても、この方法の大きな特徴のひとつとして、条件さえ整えば手術当日にインプラントと共に人工歯部分もお口の中にセット出来るのです。ですから手術の当日から入れ歯を使わずにセットされたインプラントで食事をしていただくことが可能になります。最終的に不自由なく食事が出来るまでには、少し期間が必要ですが、少なくとも手術の日から入れ歯を使わなくなる日常が訪れるのです。
この方法は、Drポーラ・マロが提唱しているALL-on-4と呼ばれている方法です。この方法は、骨が少なくなってしまった患者さんでも比較的条件の良い丈夫な骨の部分を積極的にインプラントの支えに使いますので、顎の骨か少なくなってインプラント治療をあきらめてしまいそうな患者さんでも手術を行う可能性が広がる治療方法です。ただし前回も解説させて頂きましたが、希望するすべての患者さんに手術が出来るわけではありません。CT検査を受けていただき、コンピューターによるシミュレーションで治療の可能性を判断しなければなりません。
治療が可能であれば患者さんにとってはすごく利点の多い治療方法です。総入れ歯や歯がすべてなくなりそうでお困りの患者さんはぜひこの方法が可能かどうか、ご相談されてはいかがでしょうか。
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静岡県生まれ。岩手医科大学歯学部卒業後、大学院でインプラントと生体の親和性に関する論文で博士号を取得。その後、岩手医科大学歯科補綴学第二講座の助手、講師として臨床等で活躍。その間、医局長、外来長を勤め1991年にはトロント大学に留学。2010年に北上インプラントデンタルオフィスを開設。現在、日本補綴歯科学会指導医・専門医、日本顎顔面補綴学会・認定医、日本歯科審美学会・認定医。アメリカ口腔インプラント協会(ADIA)の認定医(fellowship)。今年度、日本歯科審美学会の優秀論文賞を受賞。
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